常にアンテナの高い”情報通”でありたい。
なぜあの商品は急に売れだしたのか / マルコム・グラッドウェル
この本、導入部は「あらゆる周辺環境が事象のブレークの方向に進んでいった結果、あるとき突然The Tipping Pointが訪れた」みたいなどこか浮ついている感じがあるというか、ふわふわした構成でちょっと読んでて微妙な感じだったんだけど、それ以降は口コミ感染の仕組みをわかりやすく解説してくれてとっても面白かった。でもこれ、マーケティングというよりも社会心理学の本って言ったほうが適切だろうな感はある。
- だいたいこの3人がそろうと口コミ感染。無私の取り組みの結果としてそういう人物になっている
- 「情報通」:なんでも知ってる人*質重視
- 「媒介者」:みんなが頼りにする人*数重視
- 「説得者」:あきらめない人*納得させるの重視 「やってみずにあきらめるなんてくそったれだ!」
面白かったもの
- 80対20の法則。だいたいの仕事は20%の人によって完成される。
- 150の法則。大脳が使える認知コストはだいたい1集団150人が限界(同様に大切な人と思えるのは12人ぐらいが限界)っていうので、実際にとある少数民族では150人以上になると部族を分割する例があったり、社長の勘からハイテク企業では1部門の工場を設計開発生産含めて150人としているところもあったり、とか。集団での記憶の補完や集合知の効果を最大化することが目的らしいんだけど、これ以上巨大化すると集団への情報のインプット/アウトプットに問題が出てくる模様。
- ヘドバンの実験。ヘッドホンで学費高いよ値下げしろって音声を流してる時、うなずく動作を強制させられたグループは値下げの意見を持つ人が多く、首をヨコに振ることを強制させられたグループは値下げに反対する意見を持つ人が多くなる。
- 金の箱の話。宝探し要素を入れた宣伝が、プロの作ったCM戦略に勝利した。
- レヴァンタールの恐怖の実験。一瞬のインパクトは結局相手を説得することにはつながらない。実践的な情報が実際の行動には必要である。
- 善きサマリア人実験。/模擬監獄実験。どんな人でも状況と役割には悪者にしてしまう力がある。
終盤The tipping pointとしてあげられていた例にNYの犯罪件数低下があって、これはFreakonomicsに「中絶を認めたことによってこの時期にワルガキになっちゃう連中がそもそも”発生”しなかったので犯罪が減った」っていう例としてもあげられていたものなんだけど、The Tipping Pointでは「割れ窓理論」を実行したことによる行政や地下鉄を管理する会社や警察の変化があり、微罪がなくなっていくことによって微罪をすることに対するマイナスのインセンティブが増えていく、という感染拡大が成り立ったから犯罪は低下したとしていた。どっちもあってこそのTipping Pointなんだろうね。全体的に犯罪が経ると微罪でもワルガキが「俺はワルいぜ」って満足できるからこそそれ以上の進展を防げるっていうのはけっこーある気がするし、たぶんこれ学校で風紀検査やるのと同じ理由だろうね。
ヤバい経済学 [増補改訂版] / スティーヴン・D・レヴィット/スティーヴン・J・ダブナー 訳:望月衛
現実にあふれる雑多なデータを経済学の手法で処理してみると面白い結果が出るよ!って内容。
「クロい名前シロい名前」と成功の可否には本当に目から鱗だった。概要としては、
- 「黒人につけられやすい”クロい”名前」というものが存在する
- 狙ってるのかマジでなのかミススペルっぽい感じのが多い
- 一方で「白人につけられやすい”シロい”名前」っていうものもある
- 黒人がシロい名前付けてるとナマいってんじゃねえぞ的な雰囲気になるとかならないとか。
- でもクロい名前ではシロい名前に比べて就職しようと思っても応募した会社からお呼びがかかる率は低いらしい
- 同様にセレブ家庭でつけられやすい名前と、その反対も存在する。
- セレブ階級ではやった名前がひとまわりするとそこより下、もう一回りするともいっこ下の階級の名前としてはやる
ねー、面白いね。固定化している長期に行われている差別って被差別側がブーストさせてる要素がかなり強いんだなと。その後の章で育児教育の加熱っぷりなんかにも統計データで取り組んでたけど、結局は子供が生まれたあとどんな動きをとったとかよりも、そもそもあなたがどういう人間かってところに依る部分が大きいですよという結論になっていた。さもありなん、とはいえ、リアルすぎですよ。なんにしても「魔法のようにみえる」ところにも魔法は存在せずそこには裏付けだったりなにかのメカニズムがある。逆をいえば、魔法のようになにかが行えるようなことは存在し得ない、と。日々考えて生きろよと。そんな風に読んで思った。