読んだもの記録

書評って書くと大げさ感が凄いので、とりあえず読んだもの記録として。

シゴトの渋滞、解消します! / 西成活裕

彼のいままでの書籍を追ってたり、TV出演の回を見たりしている人なら読むべきところは特に無かったかもしれない。俺は彼の講演にまで行っちゃうような渋滞学(というか、ある程度の密度を持った個々の物体の動きについての学問)フリークなのでこの本も読んでしまったのであるが、これを読むぐらいなら彼のほかの本を読んだほうがいいかもしれない。装丁デザインなんかも非常に中途半端な感じがあるし。『シゴトの』と銘打ってしまっているのでビジネスをやる上で、スムーズに物事をすすめるためのアイディアがちょこちょこと書かれていたりもするんだけど、時間が他者によって決められてしまう学生にとってはそのまますぐ応用っていうのも難しいなあ。とりあえず思いつきのアイディアを殺さないためにすぐメモれるような環境を常に持つ、っていうとこあたりから実践してみよう。

酷道を走る / 鹿取茂雄

R157に代表される「洗い越し(沢が道路の上を流れる)」とか「落ちたら死ぬ!」看板とか、そういういかにも酷道なものの写真なんかといっしょに全国の有名どころの酷道が紹介されている本。2年前だったら相当びっくりしたろうけど、いまや道がなければ自転車かついで藪を薙いでゆく廃道ファンの世界を知ってしまったのでそれなりに”落ち着いて”読めた。これも成長かw こういう本を読むたびにインフラは作ることよりも維持することのほうが何倍も難しいんだと思わせられる。しかし酷道を趣味にしておきながらパジェロミニのような軽量でそれなりに車高もある4WD車からフィットのようなコンパクトカーに乗り換え、しかもそのフィットでいきなり雪の立ち入り禁止国道に入ってフロントバンパーで雪かきして「アクセル踏んでも先に進めなくなっちゃいました…」っていうのは正直どうなのよ、と思ってしまわないこともない。車幅のことをいつも気にしてレポートを書いている割にはあまりにもお粗末といえるのでは。

爆笑問題のニッポンの教養 教授が造ったスーパーカー / 清水浩

電気自動車の世界も遅いようでずいぶん早いんだろう、初版2007年の割には懐かしいトピックだな、と思わせられてしまった。2007年のイケイケムードはどこへやら、今ではなによりもエコで財布にも優しくなければ存在価値がない、ぐらいにクルマと人のあり方は変わってしまった。電動スーパーカーの復活は大メーカーの道楽以外を除いては可能性は無いだろう。現在にいたるまでエリーカのようなインホイールモーターを採用した一般車は出てきておらず、まあまあまともな値段で市場に出ているiMiev/プラグインステラで言ってもエンジンルームにモーターを搭載してそれをガソリンタンクの代わりにのっけたLi-ionバッテリーで駆動するだけであるが、これは既存の生産設備を利用しきってコストを落とすための方策なのか動力ソースが変わった程度ではこれ以上に合理的なパッケージングは出来ないという判断なのか…。いずれにしてもLi-ionかそれに変わる高性能バッテリーが革命的に安くなる技術的ブレイクスルーがなければ既存のガソリン車の置き換えは難しいであろう。そこらじゅうに充電スタンドを用意すると言ったところで、結局既存のガソリンエンジンの利便性よりも劣るようなシステムでは普及するまでには至るまい。電池の技術が上がらなかったとして、もし普及するチャンスがあるとすれば、そのときは石油が枯渇した時だけだろう。

酷道をゆく2 / イカロス出版

酷道系MOOKの第二弾。酷ラリさんのDVD付き。内容は第一弾のほうが濃かったように思う。清水峠なんかは通行不能区間があるんだからもうこれ完全に廃道の域だよなぁ…。ネタが足りなかったのか、廃道と首都高の特集があるのだけれども、正直ここらへんの趣味はかぶる人が多いから微妙な長さのものとかも含めて酷道に徹したほうがよかったんじゃないかなあ。しかし最近ヨッキれんさんと日本ジャンクション公団さんは道系の本だといろんなところで出てくるねw

市場の変相 / モハメド・エラリアン

発展途上国と呼ばれてきた新興国。イメージは産性の高い産業は持たず借金はあり消費も鈍い、というものであるが、実際のところは黒字を重ね消費は力強くなる一方である。いざ黒字が出来たところでどうお金を使って良いかわからない新興国は”安全”なアメリカの短期国債を買いあさる。合理的な投資行動を前提にしている市場関係者は短期国債と長期国債金利の逆転の理由すら理解できない(予測できなかった事態=ブラック・スワン)まま、世界は昨日の市場と明日の市場が衝突する変相の時代を迎えた。なにが起きているかもわからないままにリスク管理もまともにされない金融商品が買いあさられ経済システムの破綻が起きる…といったような内容の本。理解できない行動を「ノイズ」といって切り捨てる思考停止そのものが自らの破滅を招くのだから、常になにが起きているか考えることが重要で、そのためにはあらゆる情報を常識にとらわれずに分析し、責任が自らに降りかかる以上リスク管理をなおざりにすることは論外だ、と。どちらかというと政策決定者とか大規模投資家向けガイドではあるんだろうけど、市場を眺める分析ガイドとしても面白かった。